護法善神の御堂と、レストハウスや食堂棟以外の、仏を祀る処総て、
精舎は勿論、斉燈護摩を修する護摩壇に至るまで、諸尊は南東を向き礼拝者は総て北西を向く事になる。この配置条件によって護摩壇
の四隅は大凡東西南北を向く事になる。ここで毎年10月初旬に修さ
れる、伝燈の法脈に則り真如密に即して行われる斉燈護摩において
道場の四方(東西南北)と中央に、護摩の火点に先立ち、五大明王の降臨を請い願い、修法の無魔成弁の為道場を結界する所作法が
行われる。
この様に護摩の際に五大明王によって道場が結界されるのだが、
今夏友心院にて奉安された四天王も結界を張る尊格である。
須弥山世界の東西南北にあって仏の世界を守護しているとされる。
いわば本年からの斉燈護摩は五大明王の結界に加え、四天王の
冥護によってより篤い護りの中に行われることになるのだろう。
この様に考えてみると、今夏東西南北に身を置き結界をなす尊格
を奉安した背景の一つに、昨年の事件があった様に思えてならない。
あれ以来、慧燈院通用門前には警備員が終日立哨し、施設の塀
にはカバーこそかけてあるものの、刺股と思しき捕具が立てかけられて
いる様子がgoogle street viewで確認できる。
『斉燈護摩当日の真澄寺、普段より結構早い時間に出仕。苑主
代表をはじめ、主だった職員は、前日より現地山梨別院に出張り、
法要の生中継もあるので一般参座の信徒も迎えねばならず、朝から非常慌ただしい。そんな中、第一布教会館から慧燈院通用門へ
移動中、妙な雰囲気の中年男性に声をかけられる。話を聞いてみれ
ば現在山梨にいる「苑主に会いたい」等と奇体な事を言い出す。どう
やら少々ズレた御仁の様だ。多忙の折でもあるので体よくあしらって
早く所用に取り掛かろうと男性に背を向けたその刹那…』
数少ない手がかりの中、上記に事件の起こった様子を報道記事と
想像を交えて簡単に描いてみた。背後から腰部を刺された所を見ると
被疑者に背を向けた状態があったのは間違いないと思われる。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「左様・・・・・・」
慶次郎が考え考え云った。
「強いて申さば、意地とでも申しましょうか」
「意地?」
秀吉が目を瞬かせた。理解出来ないというしるしである。
「かぶき者の意地、と申すか」
「人としての意地でござる」
慶次郎の反駁は間髪をいれなかった。
関白であろうと牢人であろうと同じ人である。面白半分
に人が人を呼びつけ、曝しものにしていいわけがない。正し
く思い上がりであろう。呼びつけられ、曝し者にされた男は
相手を刺すことによってのみ、相手もまた人に過ぎないこ
とを強力に証明することが出来る。思い上りに対する痛烈
なしっぺ返しである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
隆慶一郎著「一夢庵風流記」より
勿論、上記赤字引用部は虚構の世界でのみ通用する論理でしか
ない。被害者の男性職員は別に容疑者の男性を曝し者にした訳ではない。おかしな輩に深入りしないのも処世の知恵の一つではある。
だが、刺された男性は苑主代表が聖職者と規定する教団職員で
ある。彼がもし、相手が妙な人物だからと、人を人とも思わぬ対応を
したとすれば、それが果たして聖職者として相応しい振舞いだっただろう
か?。護法の御力が強くなった今なら猶更、そんな思い上がりが許さ
れるはずがない。
南無真如
文中、指摘した「刺股と思しき捕具」だが、現在は壁面に立てかけられている様子が見えない所を見ると、通用門向かいの第一布教会館前に警備員立哨用の小屋が立てられその中に収納されているのだろうか
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